簡易式レーザー獣害対策装置

カメラやガルバノミラーを使うと、どうしてもコスト高になるので、安価な材料でレーザーを照射する簡易式レーザー獣害対策装置を作ってみました。電池で動作します。ESP32で制御しています。また、安価なステッピングモーターを使っています。ステップモーターの取付けを工夫することで部品点数を減らしています。

ケースは、バックルコンテナ BL-1.5
外寸:幅約21×奥行16.5×高さ9.5
に入れてあります。

ラインレーザーを上下に振る仕組みです。線を動かしているので、畑一面をカバーできます。動体センサーも内蔵していて、剛体を検知してレーザーを照射します。

センサーノードとも連携して、センサーノードが検知したら、レーザーを照射します。複数の簡易式レーザー獣害対策装置があれば、センサーノードからの通知で、全てのレーザーが照射されます。害獣が視線を向けた途端に、眩しい光に見舞われます。

カメラやガルバノミラーが付いていないので、狙い撃ちはできませんが、面照射でレーザーが害獣の目に入る確率を高くすることができます。


害獣から見ると、このように見えます。目の近くに来ると、かなり眩しいです。

こちらは、点発光レーザーを水平方向に振るタイプです。点が移動して線になります。ラインレーザーよりも強力ですが、害獣の目に当たる確率は低くなります。

中身は、この様になっています。RTCがあるので、WiFiが届かなくても動作します。内部の時計で、動作する時間になるまで、Deep Sleepします。

動きセンサに反応があれば、他の獣害対策装置にも通知します。外観の写真です。ホームセンターで売っている小さなBOXに入れてあります。

バッテリーは、充電式ニッケル水素電池単三6個を使っています。レーザー攻撃をしなければ、長い日数、持ちます。レーザー攻撃をし続けると、一晩で充電切れになります。ACアダプター5Vでも使えるようになっています。電源が使える場合には、ACアダプターを使うと、電池の交換がなくて便利です。

動作時のムービーです。ラインレーザーは3号機です。レーザーを振る方向が上下になっています。線を動かすのでレーザー照射領域は、面になります。

配置方法は、できるだけ複数の装置を使い、対角に配置します。これは、害獣がレーザーにお尻を向けても、反対側のレーザーから攻撃できるからです。

感知領域以外の場所には、SensorNodeを配置します。畑への侵入経路に配置するのが良いでしょう。


こちらの方は、レーザーが視線方向を向いた時だけ明るくなります。しかし、明るさはラインレーザーよりも強力です。

レーザー光線は、地上40cm程度の高さで、水平に照射するようにします。これは、鹿や猪の目の高さに合わせるためです。同時に、人間の目に入らないようにするためです。

複数台の装置があれば、どれかのセンサが反応すれば、全てのレーザーが発射されます。害獣の目に届く確率が高くなります。UDPとHTTPで通知できます。ブラウザからでもレーザー照射を命令できます。

もし、家の近くの畑に、WiFiが届いていなければ、無線LAN中継機を使うと電波が届くようになります。畑は、見通しが良いので、かなり遠くまで届くようになります。

鹿や猪は、夜行性なので、畑への侵入は深夜、早朝になります。獣害対策装置は、夜の9時から、朝の6時までしか動作しません。昼間は、畑で仕事をしていても安全です。

動作中は、IPを持っているので、pingに反応します。パソコンから、動作しているかどうかをチェックできます。

トレイルカメラとの連動も可能です。トレイルカメラの多くは、動物検出時に赤外線ライトを照射します。この赤外線ライトの信号を獣害対策装置に接続すれば、トレイルカメラの動作時にレーザーを照射できます。受動的なだけであったトレイルカメラの攻撃手段となり、害獣を追い払う状況を撮影できます。

 

 

 

SensorNode

RCWL-0510マイクロ波レーダーモーションデテクタESP8266を使った、センサーノードです。バッテリーで動作します。昇圧型DC-DCを使っているので、バッテリー電圧が2Vに低下するまで動作します。

100均で買ったタッパーに入れてあります。こんなに小さいのにIPアドレスを持っています。

動体を検知すると、UDPポート5001番に通報してくれます。

中身は、とてもシンプルです。動体センサーは、障害物があっても透過するので、タッパーの中に貼りつけてあります。

回路図です。配線図かな。

LEDは視認用なので、何でも構いません。

これが動体センサーを外側から見たところです。両面テープで貼りつけてあります。

普段は、ただのタッパーですが、近くに動くものが現れると、LEDが点灯して、UDPに通報してくれます。

通常、RCWLの検知範囲は7mほどです。14m間隔に、センサーノードを置いておけば、広範囲で動体が検知できるようになります。

 

レーザートラッカー試作機

獣害対策の必要性

平成26年度の全国の野生鳥獣による農作物被害状況は、合計で191億円となっています。そのうちでも、鹿による被害が65億円、猪による被害が54億円、猿による被害が13億円、烏による被害が17億円となっています。鹿と猪が、こんなに増えたのは、天敵であった狼が絶滅したこと、狩猟を行うハンターの減少、温暖化で冬でも食べ物があって越冬できるようになったことなどが原因だそうです。

特に鹿は増加傾向にあり、非常にひつこく、頻繁に出現し、畑の農作物を壊滅状態にしてしまいます。何よりも、せっかく作った作物を食べられた時の生産者の落胆が大きく、農作物を作る気が失せてしまいます。新就農者の場合、貸してもらえる土地は、獣害に遭いやすい場所が多く、中には、夜間の見回り中に、猪に襲われて大怪我をしたという話も聞こえてきます。

柵による対策も、2m以上の高さの柵を張り巡らさねければならず、設置の労力や資材費用の面でも大きな負担となっています。

捕獲檻を設置しても、なかなか入ってくれません。また、捕獲檻に餌を入れたり、害獣が檻に入っていないかどうかの見回りも労力がいります。猟友会による捕獲も、数が多くはなく、また、猟友会会員の老齢化が進み、ハンター不足になっています。

レーザーを活用した獣害対策

レーザーを活用した獣害対策を考えてみましょう。

  • 目的  畑の作物を獣害から守る
  • 状況  獣害は、夜間や明け方に発生する
  • 対策
    • 人感センサーで鹿や猪の接近を検知する
    • 赤外線ライトを点灯して、赤外線カメラで瞳の反射を検知
    • 瞳近くにレーザー光線を照射
    • 検知限界まで追跡

レーザーは、非常に明るい輝点が、遠方まで届きます。広い農場をカバーするのに適しています。また、夜行性動物の瞳孔は開ききっているので、明るいレーザー光が一瞬でも目に入ると、非常に眩しく感じるはずです。場合によっては、しばらく白点が目に浮かんで、視覚が機能しなくなることでしょう。

動作時間

夜の9時から翌朝4時まで動作。それ以外の時間帯は動作しない。

利用環境

  • AC100V、WiFiアクセスポイントがある場所で利用する
  • WiFiコントロール (RaspberryPi3利用)
  • 雨露が防げる天井の下に設置する
  • 風で飛ばされないように固定する

試作3号機

試作3号機は、赤外線ライト2基と赤外線カメラ、サーマルカメラをもち、Projection Ballでレーザーを照射する仕組みです。Projection Ballの照射範囲は、あまり広くはありませんが、サーマルカメラの撮影範囲はカバーできます。

赤外線カメラに写った害獣の瞳は、とても明るく写るので、単純な閾値の二値化で検出することができます。

フレーム画像毎に二値化処理を行って、中心座標を算出すれば、瞳孔の追跡ができます。適切な予測フィルター処理を行えれば、害獣がどこに移動するか、予め予測できるかもしれません。

では、人間が写った場合にはどうなるのでしょうか? 害獣のようにレーザーが照射れれるのでしょうか?

人間の場合、衣服を身に着けているので、衣服の漂白成分が明るく写ります。また、人間の瞳はあまり明るく写りません。なので、人間の瞳をめがけてレーザーが照射されることはありません。

さらに、サーマルカメラも併用して、明るく写っている点が体温程度の温度であることを検知することができます。

電子ライターで、赤外線と熱をだした場合、正確にレーザーで狙い撃ちできます。熱源であった場合だけレーザーを照射することで、飛来する虫や風の影響などによる誤動作をなくすことができます。

その他の工夫

基本的に、レーザーは水平よりも下側に照射されるようにセットします。それでも、地形によっては、民家や道路が照射範囲に入るかもしれません。そこで、攻撃する領域のマスク画像を作っておき、レーザーが照射される範囲を限定することができるようにしてあります。

また、計算負荷が増加しますが、人工知能による画像認識で、人間か害獣かの判別も行うことができます。害獣だけにレーザーを照射し、人間や自動車などにはレーザーを照射しないようにすることができます。

しかし、真夜中の畑に入り込んで、這いずり回っている人間がいたとしたら、かなり事件性を疑うべきかもしれません。

利用用途

1.獣害に困っている農地での利用

2.ゴルフ場や公園、屋外施設での獣害対策

3.防犯対策

4.倉庫や工場での発熱検知、発熱源のレーザーポインティング

展示会デモ

本レーザートラッカーは、展示会で参考出品いたします。

2017年10月4日から6日 幕張メッセ バイオオプト展 アイティプランツ ブースにて

2017年10月18日〜20日 長浜バイオ大学ドーム びわ湖環境ビジネスメッセ 「環境」と「健康」産業振興プロジェクトゾーン X-02

 

お問い合わせは、ここからでお願いします。

 

 

 

獣害対策(追払い編)

レーザーをランダムに照射する方法は、失敗でした。最初は、遠くからレーザーの輝点が動くのを観察していたのでしょう。そして、そろそろと近づいてきても、自分の動きには反応しないことを学習したのだと思います。鹿は、「この光は、自分には関係ない、ただのそういう現象だ」ということを学習したのだと思います。単なる現象ならば、恐れるに足りずということで、どんどん畑に入ってきて、植えてある野菜を食べだしたことでしょう。食べている時に、レーザーが目の近くに来ると眩しいので、レーザーの方にお尻を向けて、食害を続けたことだと思います。

レーザーを動かすサーボモーターも、1ヶ月間、夜間連続で動かしたためか、動きがおかしくなってきました。サーボモーターの故障のようです。レーザーの動く範囲が狭くなりました。

今回のレーザー光線ランダム照射実験から得られた課題をあげていきましょう。

1.鹿や猪の検出

やっぱり、害獣が畑に来たことを検出してからレーザーを動かさなければなりません。レーザーが動くのは、極、短時間でいいのです。

2.追払い動作

害獣の目の近くにレーザーが照射されなければ効果がありません。検出した害獣の目を検出して、正確に、レーザーを命中させる必要があります。これは、かなり高度な技術になります。

3.追撃動作

追払い動作だけでなく、害獣が逃げ出したら、すかさず追撃して、害獣に、ここまで来れば安全だと思わせないことです。完全に姿が消えるまで、追撃動作を続ける必要があります。

他にも気がついたことは、追払い動作の前に、何か特徴的な音をだすことです。害獣は、この音と追い払われて追撃されたことを記憶して、この音を聞くだけで逃避行動を起こすようになるでしょう。

4.逃げない時には?

レーザーでは逃げない可能性もあります。そこで、逃避行動が確認されない場合には、第二の追払い動作を行います。ロケット花火の自動発射がいいと思います。市役所に行けば、害獣追払い用のロケット花火や爆竹を無償で配布してくれます。このロケット花火を空に向けて発射すれば、爆音に驚いて逃げると思います。2発くらいは、発射したいところです。

ロケット花火以外には、BB弾のおもちゃの機関銃とか、水鉄砲とかが考えられます。

5.課題は?

先ず、真っ先に思い浮かぶのは、害獣ではなく、通りすがりの人間や自動車に向けての追払い行動が発生しないかどうかということでしょう。自動車の運転手の視界にレーザーが入ってきては、事故になりかねません。誤動作がないように、安全対策を施さなければなりません。他にも、何も来ていないのにロケット花火が打ち上がることも防がなければなりません。当然のことながら、雨や霧、風による草木の揺れ、昆虫の飛翔、日射変動にも反応しないようにしなければなりません。攻撃よりも、むしろ、安全対策のほうが大変そうです。

6.その他の難しさ

電源やWiFiが届かない場所での設置があげられます。ソーラーバッテリーで電源の確保をしなければなりません。また、バケツリレー方式でWiFiが届く範囲を広げるか、FONみたいなパブリックWiFiにつなげるかしなければなりません。WiFiスポットがなければ、3G通信になります。